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膝の外側が痛むランナー膝(腸脛靭帯炎)の原因から段階的な治療法まで

膝の外側が痛むランナー膝(腸脛靭帯炎)の原因から段階的な治療法まで

目次

膝の外側の痛みを整理し、これからの練習と治療の段階を知る


走っているときに出る膝の外側の痛みは腸脛靭帯炎(ランナー膝)によくみられますが、半月板などほかの場所が関わっていることもあるため、まずは原因と今の状態をたしかめることが出発点になります。この記事では、起こるきっかけやほかの病気とのちがい、負担の調整から運動療法へ進む段階、ランニングを再開する目安を説明します。


この記事の要点まとめ


  • 腸脛靭帯炎には、走る距離を急にふやすことや坂道が関わります。膝の外側の痛みには、ほかの原因もあります。
  • 歩くときや階段で痛むとき、腫れが続くときは受診を考えます。診察や画像の検査で、膝のようすをたしかめます。
  • 治療は負担の調整から運動療法へ少しずつ進め、症状をみながらランニングを再開します。

膝の外側の痛みはランナー膝(腸脛靭帯炎)?原因と似た疾患との違いは?

膝の外側の痛みはランナー膝(腸脛靭帯炎)?原因と似た疾患との違いは?

膝の外側の痛みは腸脛靭帯炎(ランナー膝)に多くみられますが、それ以外の疾患が隠れていることもあります。腸脛靭帯炎は、ランニングに伴う使いすぎの障害のなかでも、よくみられる疾患のひとつです。


走行距離を急に延ばした、坂道が多いなど発症に関わる要因


骨盤からすねの骨へのびる腸脛靭帯は、膝の曲げ伸ばしをくり返すたびに太ももの骨の外側の出っ張りとこすれ、その摩擦が痛みのもとになります。週末に走る距離を急にのばしたことや、下り坂・かたむいた道を走ることは、負担をふやす原因になります。また、股関節の外側の筋力(股関節外転筋)や走り方のくせが関わることも報告されていて1、いくつかの原因が重なって起こります。


半月板損傷や膝のお皿まわりの痛みとはどう違う?


膝の外側や前面が痛む疾患はほかにもあり、痛む場所や出方が見分ける手がかりになります。


疾患名主な痛みの場所症状の特徴
腸脛靭帯炎膝の外側(骨の出っ張り付近)一定の距離を走ると痛み、休むと和らぎやすい
半月板損傷膝の内側や外側の関節の隙間曲げ伸ばしでの引っかかり感、ひねったときの痛みや腫れ
膝蓋大腿疼痛症候群膝のお皿(膝蓋骨)のまわりや裏側階段の上り下りや立ち上がりでのお皿周辺の痛み

ただし症状が重なることもあり、自己判断だけで見分けるのには限界があります。


ランナー膝と決めつけず、痛みの原因を確認する


痛みを我慢して走り続けるべきか迷ったときは、まず原因を確かめることが判断の土台になります。当院では、レントゲンで判断に困る症状にはMRI検査も用い、痛みの原因が分かることでご自身の不安が少し和らぐことも大切にしています。身体の症状だけでなく「心体」に目を向け、納得して治療へ進めるよう心がけております。


どんなときに整形外科を受診する?診察や画像検査では何が分かる?


走るたびに毎回痛む場合や、日常生活の歩行・階段でも痛む場合、膝の腫れや引っかかり感がある場合は整形外科の受診を検討してください。ランニングによる膝の障害は珍しくなく、状態に応じた確認が求められます2。


様子を見る範囲と受診を考えたいサインの目安


走っているときだけ軽く痛み、走る距離をへらして数日休むと落ち着くときは、膝への負担を下げて様子をみる方法もあります。いっぽうで、次のサインがあるときは早めに受診を考える目安です。


  • 仕事中の階段の上り下りや平地の歩行でも痛む
  • 2週間ほど練習量を落としても痛みが変わらない
  • 膝が腫れている、または曲げ伸ばしで引っかかる感じがする

立ち仕事や日常の移動に支障が出る前に、一度状態を確認しておくことが望まれます。


膝の外側が痛むとき、レントゲンとMRIは何を調べるのか


整形外科の画像検査では、レントゲンでおもに骨のならびや疲労骨折がないかを調べます。一方、骨以外の靭帯や半月板、軟骨の様子をくわしく見たいときは、MRI検査が役立ちます。当院では院内にオープン型MRIを導入しており、レントゲンでは判断に困る靱帯の損傷や、一部の骨折の診断に役立てています。


診察で確認される痛む場所と動作


診察では、膝の外側を押して痛む場所(圧痛)や、ノーブルテスト(膝の外側を押さえながら曲げ伸ばしして痛みを確かめる検査)での痛みの出方、股関節まわりの柔軟性・筋力を確かめます。画像検査は、こうした診察の結果を踏まえて必要性を判断します。


腸脛靭帯炎の治療はどう進む?負荷の調整から運動療法までの段階は?


腸脛靭帯炎の治療は、手術をしない方法(保存療法)から始めることが多く、はじめに膝への負担をへらし、そのあと股関節まわりの運動へと少しずつ進めます。ただし、どの方法の組み合わせが合うかは、一人ひとりのようすによってちがいます。


まず見直す走行距離と坂道、仕事中の階段などの負荷


痛みが強い時期は、原因となる摩擦を減らすことが優先です。ランニングは痛みが出る距離より手前で切り上げるか一時的に休み、下り坂や硬い路面の走行を控えます3。日常を完全に休む必要はありませんが、仕事中の階段では手すりを使う、重い荷物を運ぶ回数を調整するなど、膝の外側にかかる負担を和らげる工夫を取り入れます。


痛みが落ち着いてから始める股関節まわりの筋力強化とストレッチ


日常の歩行や階段での痛みが落ち着いてきたら、再発を防ぐための運動療法へ段階を進めます。いま痛みがある女性ランナーでは、股関節外転筋(お尻の外側の筋肉)の筋力の弱さや、走るときの股関節のねじれの動きが関わる可能性があるとされています1。そこで、太ももの外側のストレッチに加え、お尻の外側の筋肉をきたえることや走り方の見直しを行います。


運動を始める時期や負荷の量は痛みの程度で変わるため、医師や理学療法士と相談しながら進めてください。運動のあとに痛みや腫れが強まるときは負荷を下げ、ふだんの歩行や階段で痛まない範囲を目安に少しずつ進めます。


ポイント

痛みが強い時期は走行距離や階段などの負荷を抑え、日常の痛みが落ち着いてから股関節まわりの筋力強化やストレッチへ段階を進めます。


改善が乏しいときに治療を見直すタイミング


走る量をへらしてストレッチなどを続けても痛みが長引くときや、ふだんの動きでの痛みが強まるときは、治療の進め方を見直す時期です。腸脛靭帯のほかに問題がないかをもう一度たしかめ、リハビリの内容や、電気や超音波をあてる治療などの選択肢を医師と相談します。


大会には間に合う?ランニング再開の考え方と受診前の準備は?


回復までの期間には個人差があり、目標の大会に間に合うかどうかは現在の痛みの強さや原因によって変わるため、一律には言えません32。焦って距離を戻すのではなく、段階を踏んで再開を判断します。


回復期間に個人差が出る理由とランニング再開の目安


痛みを我慢して走り続けた期間や、筋力・フォームなど発症要因の組み合わせによって、落ち着くまでの期間には人によって幅があります。ランニング再開を考える目安は、平地の歩行や仕事中の階段で痛みがないこと、短い距離をゆっくり走っても翌日に痛みが残らないことです。再開時は平坦な道で短い距離から始め、週ごとの走行距離を少しずつ戻していきます。


受診時に伝えたい痛みの経過と仕事・大会の予定


診察を受ける際は、次の項目をメモして伝えると今後の見通しを立てやすくなります。


  • 痛みが出はじめたころと、走りはじめて何kmあたりで痛むか
  • さいきん走る距離がふえた、坂道の練習をふやしたなどの変化
  • 仕事中の階段や歩くときに痛むかどうか
  • 出る予定の大会の日にちや、家族の送りむかえなど通院に関わる予定

当院ではお話を丁寧に伺い、現在の状態と行う治療を分かりやすく説明することを心がけております。ご来院時につらくても、お帰りになる際には笑顔になれるような、相談しやすく通いやすい場を目指しています。


受診前に知っておきたい検査や費用のこと


どのくらい通うかや、MRIなどの検査がいるかどうかは、診察のうえで決まります。整形外科でのふつうの診察や検査は、多くの場合は公的な医療保険が使えます。


ほかの治療でなかなか良くならないときに、体外衝撃波治療などを保険を使わずに受けることがあります。その場合は費用が変わるため、受ける前に医療機関へ金額をたずねておくと見通しを立てやすくなります。あてたあとに体に出やすい変化や気をつけることも、あわせて診察のときに聞いておきましょう。


実際の費用は医療機関により異なるため、各院にご確認ください。当院の費用は診察のうえでご案内します。当院へは名鉄竹鼻線 柳津駅から徒歩15分でお越しいただけます。


よくある質問


Q. 走った直後に膝の外側が痛むときは、冷やすべきですか?


A. 走った直後に膝の外側に熱っぽさやズキズキする痛みがあるときは、タオルを巻いた保冷剤などで短い時間ずつ冷やし、膝を休めます。ただし、冷やし続ければ靭帯の炎症が治まるわけではないため、痛みが繰り返す場合は練習量を見直し、整形外科へご相談ください。


Q. 湿布やサポーターを使えば、練習を続けても大丈夫ですか?


A. 湿布は痛みを和らげる補助であり、サポーターやテーピングは膝の負担を軽くするためのものです。痛みが出ている状態で無理に距離を走ると負担が積み重なるため、まずは痛みが出ない範囲へ運動量を調整し、使い方については医師にご確認ください。


Q. オープン型MRIはどのような特徴がありますか?


A. オープン型MRIは、従来の筒型の機器に比べて周囲が開けた構造になっており、狭い場所が苦手な方でも検査を受けやすい設備です。膝を完全に伸ばすことが難しい状態や、横向き・斜めの姿勢でも検査を行える場合があります。


参考文献


1. Foch E, Brindle RA, Pohl MB. Lower extremity kinematics during running and hip abductor strength in iliotibial band syndrome: A systematic review and meta-analysis. Gait & posture. 2023. PMID: 36758425 / DOI: 10.1016/j.gaitpost.2023.02.001

2. Kakouris N, Yener N, Fong DTP. A systematic review of running-related musculoskeletal injuries in runners. Journal of sport and health science. 2021. PMID: 33862272 / DOI: 10.1016/j.jshs.2021.04.001

3. Sanchez-Alvarado A, Bokil C, Cassel M et al. Effects of conservative treatment strategies for iliotibial band syndrome on pain and function in runners: a systematic review. Frontiers in sports and active living. 2024. PMID: 39247485 / DOI: 10.3389/fspor.2024.1386456

4. 薬剤アレルギー/Q&A|一般社団法人日本アレルギー学会. https://www.jsaweb.jp/modules/citizen_qa/index.php?content_id=10


大川 力

医師


おおかわ整形外科

院長

大川 力

▶ 監修者プロフィール

経歴
1991年 岐阜大学医学部卒業
1991年 三重大学医学部整形外科学教室入局
1991年 山田赤十字病院(現伊勢赤十字病院)整形外科勤務
1997年 名張市立病院整形外科勤務
1998年 山本総合病院(現桑名市総合医療センター)整形外科勤務
2000年 富田浜病院整形外科勤務
2000年 おおかわ整形外科開院
資格・所属学会
日本整形外科学会整形外科専門医
日本運動器学会運動器専門医