
目次
職場に伝える休みの期間と、週末の運動をどう両立させるか
「職場にはどのくらい休むと伝えればいいのか」。前十字靭帯損傷と診断された働き盛りの方から、よく受ける質問です。この記事では、膝のぐらつきや活動内容から手術と保存療法を考える視点を整理します。そのうえで、車通勤・立ち仕事・フットサルへの復帰目安を場面ごとに分けて紹介します。羽島にお住まいの方が相談先で確認しておきたい点もまとめました。
この記事の要点まとめ
- 膝のぐらつきや損傷部位、仕事・競技の内容を踏まえ、手術と保存療法を相談します。
- 歩行・通勤・立ち仕事・フットサルで復帰時期は異なり、競技復帰は術後9か月〜1年が目安です。
- リハビリは段階的に進め、筋力や片脚動作、医師の評価をもとに復帰を判断します。
前十字靭帯損傷は手術か保存療法か――膝のぐらつきと活動内容で考える
歩行や立ち仕事で膝が崩れるなら、何を診てもらうか
普段の歩行や現場での方向転換で、膝がガクッと抜ける場面がある。その頻度や起きる状況が、方針を考える材料になります。診察では、腫れの程度、曲げ伸ばしの範囲、半月板など周囲の組織に損傷があるかも確かめます。
MRIで靭帯の断裂が分かっても、それだけで方針は決まりません。再建手術と運動療法中心の治療を比べた研究では、スポーツ復帰率や活動レベルに明確な差がみられなかったと報告されています1。
保存療法を選ぶ場合も、フットサル復帰には段階的な練習が必要
保存療法は「何もしない治療」とは違います。太ももやお尻の筋力、片脚での安定性を整えるリハビリを、数か月単位で続ける方法です。
仕事に戻れることと、切り返しの多い運動に戻れることは、別の判断になります。ボールを使った練習や対人プレーで膝崩れが繰り返される場合は、手術を含めて改めて相談しましょう。
手術を考える前に、休職と再受傷の不安を言葉にする
診察では、立ち仕事の時間、休める期間、お子様の練習に付き添う頻度などを具体的に伝えてください。
再建手術後に競技へ戻った若く活動的な人では、再び靭帯を痛める例が一定数報告されています2。ただし、研究の対象は10〜20代の選手が中心です。30代後半で週末にプレーする方に、そのまま当てはまるとは限りません。
手術後の復帰期間は?歩行・車通勤・立ち仕事・フットサルを分けて確認

以下の期間は一般的な目安です。損傷の状態や術式、手術を行う医療機関の方針によって変わります。
歩き始めと日常生活は、術後の指示を基準にする
手術の翌日から数日のうちに、松葉づえを使った歩行が始まることもあります。一方で、半月板の縫合を同時に行った場合などは、体重をかけるのを控える期間が設けられます。
術後管理は手術内容に応じて個別に決まるものです3。歩けるようになっても、階段の上り下り、入浴、お子様とのボール遊びは、少しずつ範囲を広げていく形になります。
車通勤と工場での立ち仕事は、別々に復帰を相談する
運転を再開する前には、次の点を確認します。
- 手術したのが左右どちらの膝か
- 急ブレーキを確実に踏めるか
- 痛み止めで眠気が出ていないか
右膝の場合は、ペダル操作の関係で再開まで時間がかかりやすい傾向があります。
立ち仕事は、長時間の立位、構内の歩行距離、荷物の運搬に分けて考えると、職場に説明しやすくなります。現場への完全復帰は仕事内容や回復状況に応じて判断し、軽作業から始める形で事前に相談しておくと、予定を組みやすいでしょう。
フットサルは走れるようになってからも復帰判定が必要
ジョギングは、術後3〜4か月ごろから許可されることが多いとされます。ただし、急停止や切り返し、接触プレーはさらに先の段階です。
競技への復帰は術後9か月〜1年程度を見込むのが一般的です。早すぎる復帰は、再受傷の要因になり得ると考えられています2。
復帰を急がないためのリハビリと、受診が必要な変化
最初は腫れと可動域に対応し、次に筋力を戻す
術後早期は、腫れを抑えながら膝をまっすぐ伸ばす・曲げる練習が中心になります。その後、足を床につけたまま行うスクワットのような運動や、座って膝を伸ばす運動へと広げていきます。
座って膝を伸ばす運動を早期から取り入れる方法も検討されています。ただし、研究の質や条件には限りがあります4。負荷や開始時期は、担当の医師・理学療法士の指示に沿って決めてください。
競技復帰は筋力・片脚動作・医師の評価で判断する
競技復帰の前には、たとえば次のような項目を確認します。
- 太ももの前側・後ろ側の筋力に左右差がないか
- 片脚でのジャンプと着地が安定しているか
- 切り返しの際に膝が内側へ入らないか
- 運動後の腫れや膝崩れがないか
日数が経ったことだけを、復帰の条件にしないのが基本です42。
痛みや腫れが増したときは、運動を進める前に相談する
練習量を上げた翌日に腫れが引かない、膝がガクッとする。そんなときは負荷を一段階戻して、担当の医師に相談しましょう。
次のような変化は、手術を受けた医療機関へ早めに連絡したいサインです3。
- 傷の赤みや浸出液
- 発熱
- ふくらはぎの強い痛みや腫れ
競技に戻った後も、筋力と着地の練習を続けることが再受傷への備えになります。
羽島で相談するときは、検査と手術後の通院先まで確認
診断資料を持参し、オープン型MRIが必要か尋ねる
他院で診断を受けている場合は、紹介状や画像データを持参してください。膝崩れが起きた場面や、現場で避けられない動作も伝えると、話が進めやすくなります。
検査では、必要に応じてオープン型MRIやレントゲンが検討されます。MRIは、半月板や軟骨の状態を確認する必要があるときに検討する検査で、撮り直しを前提とはしません。トンネル型に比べて周囲が開けた構造のため、閉所が苦手な方も相談しやすい検査です。
手術先と羽島から通うリハビリ先を、治療前に確認する
手術が必要になった場合に備えて、受診時に次の点を尋ねておくと見通しが立ちます。
- 紹介先の医療機関と、手術までの流れ
- 退院後の診察やリハビリをどこで受けるか、通院の頻度
- 職場に伝える勤務制限の内容
再建手術は公的医療保険の対象で、高額療養費制度を使える場合もあります。ここでの費用に関する記載は一般的な情報であり、当院の費用ではありません。実際の費用は医療機関により異なります。
受診の際は、通勤経路や家族の送迎の都合も含めて、通い続けられるかどうかを確かめておきましょう。
よくある質問
Q. 前十字靭帯の手術後、いつから歩けるようになりますか?
A. 術後数日以内に、松葉づえを使って歩き始める場合があります。ただし、半月板の処置を同時に行ったかどうかなどで、体重をかけてよい時期は変わります。手術を受けた医療機関の指示に沿って進めてください。
Q. 手術後の日常生活はどう変わりますか?
A. 術後しばらくは、装具や松葉づえを使って生活します。入浴や階段の上り下り、家事は、リハビリの進み具合に合わせて範囲を広げていきます。デスクワーク中心であれば、立ち仕事より早く職場に戻れるケースもあります。
Q. 手術後に気になりやすいことはありますか?
A. 術後1年以上たっても、正座のしにくさや膝の違和感を感じる方がいます。また、復帰を急ぐと再受傷につながる可能性も指摘されています。気になる症状が続く場合は、自己判断せずに診察で相談しましょう。
Q. 前十字靭帯を手術した場合、30年後の膝はどうなりますか?
A. 前十字靭帯損傷のあとは、手術の有無にかかわらず、長い年月の中で変形性膝関節症が起こりやすいと報告されています。半月板や軟骨の状態も影響するため、筋力の維持と、定期的な膝の状態の確認が備えになります。
参考文献
1. Filbay SR, Bullock G, Russell S, et al. No Difference in Return-to-Sport Rate or Activity Level in People with Anterior Cruciate Ligament (ACL) Injury Managed with ACL Reconstruction or Rehabilitation Alone: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Medicine. 2025. PMID: 40603829 / DOI: 10.1007/s40279-025-02268-5
2. Wiggins AJ, Grandhi RK, Schneider DK, et al. Risk of Secondary Injury in Younger Athletes After Anterior Cruciate Ligament Reconstruction: A Systematic Review and Meta-analysis. The American Journal of Sports Medicine. 2016. PMID: 26772611 / DOI: 10.1177/0363546515621554
3. 日本外科学会 https://www.jssoc.or.jp/
4. Fontanier V, Vergonjeanne M, Eon P, et al. Effect of open kinetic chain exercises during the first weeks of anterior cruciate ligament reconstruction rehabilitation: A systematic review and meta-analysis. Physical Therapy in Sport. 2025. PMID: 39985872 / DOI: 10.1016/j.ptsp.2025.02.005
1991年 三重大学医学部整形外科学教室入局
1991年 山田赤十字病院(現伊勢赤十字病院)整形外科勤務
1997年 名張市立病院整形外科勤務
1998年 山本総合病院(現桑名市総合医療センター)整形外科勤務
2000年 富田浜病院整形外科勤務
2000年 おおかわ整形外科開院
日本運動器学会運動器専門医
あわせて読みたい関連記事


